ゲームアプリの開発・販売・運用の税務会計の特徴と注意点

ゲームアプリの開発というと一昔前まではプレイステーションなどの「据え置き型ゲーム機」用の開発がほとんどで、その開発にかかる費用も労力も大きいイメージでした。しかし、最近のゲームアプリはスマホなどで遊ぶための「ソーシャルゲームアプリ」がメインとなり、開発者も個人や中小法人から、有名メーカーまで様々です。

そんなゲームアプリの開発と販売に関する税務は、一般的な業種とは違った要素が多く、税務上の解釈をふくめ注意すべき点が多いという特徴があります。

ゲームアプリの開発と販売を行う事業者は大小さまざまですが、収益を上げる方法によって大きく2種類に分類することができます。

  • ゲームアプリの開発を請負、販売事業者へ納入し収益を上げる方法
  • ゲームアプリを開発し自社で販売・運用し収益を上げる方法

この2つの収益形態では税務・会計の方法が全く違うアプローチとなり、以下で開発・販売の税務についての特徴と注意点を説明していきます。

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ゲームアプリ開発で販売事業者へ納入するケース

ゲームアプリ開発で販売事業者へ納入するケース

一つ目はゲームアプリの開発を請負、販売事業者へ納入する形態のケースでは税務・経理についても比較的分かりやすく、ほぼ納入時の売上とそれに対応した原価の把握で完結します。

この形態の税務については建設工事系の税務と似ているので、比較的分かりやすいと言えます。

売上や経費の計上時期ですが「工事(開発)完成基準」と「工事(開発)進行基準」という2つの方法から選択することとなります。

 

開発完成基準を選択した場合

開発完成基準を選択した場合、ゲームアプリが完成し納入先の検収が終了した時点で売上を計上することになります。またそれまでの期間に開発に要する人件費を含めた費用は未成開発支出金として資産計上し、検収日に費用へ振替をします。(日本の建設業では一般的だった経理手法です。)

開発完成基準のメリットですが、売上と経費が検収日に一括計上するため経理手順が簡便な点でしょう。また、簡便な分ゲームアプリ開発ごとの会計の確実性は高い手法といえます。

いっぽうデメリットとしては原価管理が雑になりやすい傾向があり、開発中にクライアントから出されがちな「仕様変更」などで、当初予定より開発費がかさみ、結果的に赤字だったというケースが見られます。

受託者としてはリスクのある経理基準といえます。

 

開発選考基準を選択した場合

開発選考基準の場合はプロジェクトの完成前に、アプリ開発の進捗度に対応して複数回売上と経費を計上することになります。

欧米諸国では一般的な会計方法でしたが、近年では日本でも多くの企業で採用されています。

(なおアプリソフトの開発が「1年以上の長期間の請負」かつ「請負額が10億円以上」の場合、法人税法の規定により開発選考基準が強制適用されます。)

会計・税務では管理が煩雑になり、開発選考基準を適用するためにプロジェクトの「収益総額」「原価総額」「進捗度」という3つの要素を高い信頼性をもって見積もる必要があります。

3つの要素のうち「収益総額」と「原価総額」については正確な見積もりは比較的容易ですが、「進捗度」に関しては正しく把握することは困難です。そのため進捗度を判断するため、原価総額に対して判断時点で消化した原価から判断する「原価比例法」を用いるのが一般的です。

つまり簡単に言うと、予定される原価総額の半分を消化したとき予定される収益の半分を計上するということになります。

開発選考基準と比較すると、管理の手間が増えるデメリットがありますが、クライアントの追加注文のたびに原価を見積もり請求することで、プロジェクトの赤字化を防ぎ、同時に要求に対して都度請求することによりクライアントの不明瞭かつ理不尽な要求を防ぐ効果があります。

いずれの会計基準を採用しても、基本的には売上とそれに対応した原価・経費の計上だけとなります。

 

ゲームアプリ開発で自社運用・販売するケース

ゲームアプリ開発で自社運用・販売するケース

二つ目はゲームアプリを開発し自社で販売する形態ですが、昔であればゲームアプリの販売はCDなどのメディアで販売することが主流でしたが、現在では販売(収益化)方法も多様となり、それにともない税務も複雑化しています。

それというのも収益を上げる手段がネット上のダウンロードを含めた「ゲームアプリ」の販売だけではなく、課金システムによる収益や期間ごとの利用料収益など、単純な物販とは違いがあるからです。

ゲームアプリを開発し販売まで行う場合、先ほどの請負のケースと違い、開発にかかった費用の大部分は無形固定資産(ソフトウェア等)に計上し減価償却をしていくことになります。

ゲームアプリの開発では完成までに多くの費用が発生し、販管費として損金経理するものと、最終的に資産計上すべきものか明確に分けなければなりません。

資産計上すべきものは支出時点では「仕掛品」や「ソフトウェア仮勘定」などに計上しておき、開発が終了し販売を開始した時点で無形固定資産の「ソフトウェア」へ振替します。

税務調査などで仕掛品ではなく損金経理をして否認される事例が多いので注意しましょう。

 

収益計上の時期に関して

ゲームアプリはウェブサイトでのダウンロード販売が多く、収益の把握が面倒なケースもあります。

自社サイトからのダウンロードであれば把握も簡単であり、その時点で売上計上できますが、外部販売プラットフォームを利用している場合は、各プラットフォーム事業者から販売データを取得し売上計上すようにします。

数か月や1年などの期間を区切った利用料収入は、決算期間に含まれる部分は売上に計上し、それ以降の期間分は前受金に計上し次期以降に売上へ振替します。

 

ソフトウェアの減価償却について

税務上では2種類の耐用年数しか認められず、

  • 「複写して販売するための原本」の3年
  • 「その他のもの」の5年

以上の耐用年数しかありません。

一般の会社でも会計ソフトなどソフトウェアを購入し減価償却をすることはありますが、この場合5年の均等償却に該当します。

では運用・販売目的で開発したゲームアプリはどちらに該当するのでしょうか。

現実的には(税務上)5年の「その他のも」を選択するケースがほとんどで、その理由が「ダウンロード販売が大半で、複写の原本というのにそぐわない」ことと、税務調査でのリスクを避けるためです。

いっぽう企業会計規則上は「自社利用(サービス提供目的)」に該当し、3年以内の償却となっています。大手ゲームメーカーでは2年償却しているところもあります。

しかし、税務上は認められないため、5年償却の限度額を超える部分は法人所得計算では加算しなければなりません。

業界からは「ゲームアプリの販売価値が存続する期間は3年でも長いくらいなので、5年償却というのは実態と乖離している」という声があり、この点に関しては国税当局が現実社会に追いついていないといえるでしょう。

 

最後に

最後に

ゲームアプリ開発では開発請負であっても販売目的であっても、その原価に算入すべきかどうかの判断が難しい点があります。

とくに開発前の試験や研究目的の支出の判断は迷うことが多いでしょう。

この判断基準は明快なものがないので、完成したゲームアプリに対する直接的な影響の度合いで判断し、明快に原価から外せるものは「試験研究費」などの費目で損金経理できます。

また、開発に当たっては外注するケースも多いので、発注先が個人事業者の場合の源泉徴収漏れにも注意が必要です。(これも税務調査で指摘が多い事項です。)

ゲームアプリの開発では個人をはじめ小規模事業者が多く、経理や税務に人的リソースを割けないケースが多いものです。

しかし、そこを疎かにすると開発業務で赤字が発生したり、税務調査で思わぬ指摘を受け追徴課税されたりと、経営上の大きなリスクになり得ます。

そんな事態にならないよう、ゲームアプリ開発と販売に関する税務の特徴をよく考え備えている税理士に依頼することで、開発に集中できる環境を整えるのが得策といえます。

是非、お悩みの場合は東京都千代田区に事務所を構える税理士法人ハンズオンにお任せください。

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