法人の消費税の納税義務者・免税事業者・課税対象となる取引について

消費税は、消費者である個人としてはなじみ深い税金ですが、事業者にとっても身近で重要な税金です。

昨今の増税により、事業者のキャッシュフローなどへの影響も増していると考えられ、消費税の基本的な知識を押さえておくことは、経理担当者はもちろん、経営者や企画部門の方などにおいても必須といえます。

今回は、消費税の学習の中でも入り口でありながら奥の深い、

  • 消費税はどのような取引に課されるのか
  • あるいはどのような取引には消費税が課されないのか

という点を中心に説明させていただきます。

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消費税の納税義務者

はじめに、消費税の納税義務者について確認します。

消費税の納税義務者は、「法人」及び「事業を行う個人」です。こちらでは、法人(企業)を前提に説明していきます

消費税の納税義務者である法人は、顧客への売上げ等に係る受け取った消費税から仕入れ先への仕入れ等に係る支払った消費税を差し引いた金額を国や地方自治体に収めることになります。

法人(企業)の消費税の納税

顧客から受け取った消費税は預かったもの、仕入れ先に支払った消費税は預けたものであり、国等へはその差額だけを納めればよいというイメージです。

消費税の免税事業者とは?

消費税の免税事業者とは?

次に、消費税の免税事業者について簡単に説明します。

法人の「基準期間」または「特定期間」における消費税の課税される売上高が1,000万円以下の場合には、消費税の納税義務が免除されます。基準期間とは、原則としてその法人の前々事業年度のことをいい、特定期間とは、原則として前事業年度の上半期のことをいいます。

この規定により、消費税の納税義務が免除される法人を一般に「免税事業者」といいます。

したがって、一般的な1年決算の法人であれば、前々期または前上半期の課税売上高が1 , 000万円以下の場合、当期において免税事業者となります。新設された法人の場合、基準期間が存在しないため、原則として免税事業者に該当します。

ただし、この場合でも、その法人の期首の資本金が1,000万円以上の場合等は、納税義務は免除されません。

なお、免税事業者であっても、「課税事業者選択届出書」を提出することで、課税事業者となることができます。

※一般的には創業間もないころは免税事業者である方が有利なことが多いのですが、消費税の還付が見込まれるようなケースでは、あえて課税事業者を選択することもあります。

 

消費税の課税対象となる取引とは?

消費税の課税対象となる取引とは?

ここから本題である、法人のどのような取引に消費税が課税されるのかを確認していきましょう。

はじめに、法人の行う取引を「国内取引」、「輸入取引」、「国外取引」の3つに区分してみます。このうち、消費税の課税対象となるのは下表のとおり国内取引と輸入取引ということになります。

取引区分課税対象補足
国内取引対象となる後述する「資産の譲渡等」に該当すれば「課税取引」となり、該当しないものは「不課税取引」として課税対象外。また、資産の譲渡等に該当しても、一部の取引は「非課税取引」となり課税されない
輸入取引対象となる原則として課税取引となるが、一部は非課税取引となる
国外取引対象とならない不課税取引となる

(注)リバースチャージ方式が適用される特殊な取引については割愛しています。

そして、表の補足欄のうち、課税取引とはまさに消費税が課される取引をいいます。また、不課税取引と非課税取引はいずれも消費税が課されない取引ですが、課されない理由や消費税の納税額の計算に与える影響に違いがあるため、明確に区分する必要があります。

以下では、3つの取引区分のうち、基本かつ一般的に取引数も最も多くなる国内取引についての説明を行います。

 

課税取引となるための要件

消費税の課税の対象となる取引のうち、次の課税の4要件をすべて満たす取引が消費税の課税取引となります。

  1. 国内において行うもの
  2. 事業者が事業として行うもの
  3. 対価を得て行うもの
  4. 資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供である
    ・資産の譲渡とは、資産(棚卸資産だけでなく、土地・建物などの有形固定資産や特許権や営業権などの無形固定資産も含まれる)の売却のこと
    ・資産の貸付けとは、資産(同上)の賃貸のこと
    ・役務の提供とは、土木工事、運送、保管、広告、情報提供その他のサービスを提供すること

上記のうち②~④を満たすものを、消費税法では「資産の譲渡等」といいます。

やや馴染みにくいかもしれませんが、資産の譲渡等という用語は消費税の説明をしていくうえで頻出する用語です。これに①の要件を合わせた「国内における資産の譲渡等」が最も一般的な消費税の課税取引となります。

 

不課税取引とはどんな取引?

上記の4要件のうち、いずれかでも満たさない取引は、消費税の課されない不課税取引となります。

例えば、次のような取引は不課税取引となります。

不課税取引の例不課税となる理由
国外に所在する資産の譲渡(国外取引)①の国内において行うものという要件を充足しないため(※)
個人が消費者の立場で行う自己所有資産の譲渡②の事業者が事業として行うものという要件を充足しないため
サラリーマンが労働を提供して受け取る給与②の事業者が事業として行うものという要件を充足しないため
株主としての地位に基づき受け取る配当金③の対価を得て行うものという要件を充足しないため
保険事故発生に伴い受け取った保険金③の対価を得て行うものという要件を充足しないため

(※)国内取引に該当するかどうかは、原則として、資産の譲渡・貸付けについては資産の所在地、役務の提供については役務の提供が行われた場所により判断します。

消費税の非課税取引とは

課税の4要件を満たし、課税対象となる取引においても、税の性格から課税することになじまないものや社会政策的な配慮が必要と考えられるものについては、消費税を課さないこととされています。

このような取引のことを消費税の「非課税取引」といいます。

【代表的な非課税取引】

  • 土地の譲渡及び貸付け
  • 株式や社債などの有価証券の譲渡
  • 金融取引に係る利子や保険料
  • 国等が行う一定の事務に関する役務の提供
  • 病院の社会保険診療など
  • 学校法人などの授業料や入学金、施設設備費など
  • 住宅の貸付け(貸付期間が1カ月未満の場合は課税取引)

不課税取引が消費税の課税要件を満たさないため課税されないのに対し、非課税取引は消費税の課税要件を満たすものの政策的な観点等から課税しないこととしているのです。

消費税の免税取引とは

先ほど、法人の行う取引を国内取引、輸入取引、国外取引の3つに区分しましたが、これを見て「輸出取引」はどうしたのだろうと感じた方もいらっしゃるかもしれません。

実は消費税法においては、輸出取引は広い意味での国内取引に含まれることになるのです。

なぜかというと、通常の輸出取引は、国内取引の課税の4要件を満たす課税取引ということになるからです。「国内において行うもの」という要件も、例えば商品の輸出(資産の譲渡)であれば、資産の所在地は国内であるため要件を満たしていることになります。

それでは、資産の譲渡等に該当する輸出取引にも10%の消費税が課されるのかというと、そうではありません。

消費地課税主義に照らすと、商品が消費されるのは国外であるため、そこに日本の消費税を課すことはできません。

一般的には、輸出先の国で、その国の法律に基づいた消費税に相当する税金が課されることになります(日本における輸入取引に消費税が課されるのと同様の理屈です)。

このように、輸出取引は課税取引であるのに日本の消費税を課すことはできません。

では、どうするのかというと、0%の課税をする、つまり「免税取引」とすることとされているのです。

日本をはじめ多くの国では、消費税(またはそれに相当する間接税)は、商品やサービスが「消費」される国で課税するという考え方をとっています。このような考え方のことを「消費地課税主義」といいます。前述の3つの取引区分に消費地課税主義を当てはめると、理解が進みやすいのではないでしょうか。

国内取引に係る商品は当然として、輸入商品も国内で消費されるため、国内取引と輸入取引は消費税の課税対象となります。
一方、国外取引では消費は国外でなされるため消費税の課税対象とはならないのです。

 

取引の区分が必要となる理由

ここまで、国内取引における消費税の課税取引、不課税取引、非課税取引、免税取引の概要を説明してきました。

この中で、消費税が課されることのない不課税取引と非課税取引、さらに0%課税である免税取引をなぜ区分する必要があるのか疑問に思われたかもしれません。最後にこれらの区分がなぜ必要となるのか、簡単に理由を説明します。

はじめに説明したように、消費税の納税義務者である法人は、顧客から受け取った消費税から仕入れ先に支払った消費税を控除した金額を国等に納めます。

このように、消費税の納税額の算定上、仕入れ先に支払った消費税を控除する仕組みを「仕入税額控除」といいます。

では、この仕入れ先に支払った消費税は全額控除できるのかというとそうではありません。

ここでは詳細は割愛しますが、例えば収入面で非課税取引のある法人は、この仕入税額控除できる金額の計算上、一定の制限を受けることが多いのです。

これはつまり、控除できる消費税額が減るということであり、その分消費税の納税額が多くなるということです。

非課税取引の多い法人(例えば不動産業や金融業、病院など)ほどこの制限は大きくなり、法人の資金繰り等にも大きな影響があります。

また、免税取引も仕入税額控除の計算に影響がありますが、その影響の仕方は非課税取引とは異なるため、明確に区分しなければなりません。

 

最後に

以上のように、課税・不課税・非課税・免税の取引区分を正確に判定することは、適正な消費税の納税額の計算上とても大切です。

日々の経理処理を行う際は、これらを混同しないよう注意していく必要があります。

ご相談や税理士をお探しの場合は、是非「税理士法人ハンズオン」にお任せください。

【参考】国税庁:No.6501 納税義務の免除国税庁:No.6205 非課税と免税の違い

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