事業をおこなっていくうえで必要不可欠なものが「事業資金」です。特に個人から法人へ事業形態が変わる「法人成り」や「創業」などの場合においては資金調達の面から計画していかなければなりません。
資金調達の方法には、金融機関からの融資が最も一般的ですが、最近では、クラウドファンディングなど、インターネットを活用した資金調達の方法も一般的になりつつあります。
その他にも、国や地方公共団体からの補助金や助成金を活用する方法もあります。場合によっては条件を満たすことで返済不要なお金をもらうことができるため、申請条件などを満たしている事業者はぜひとも検討したいところです。
しかし、最近では、国や地方公共団体からさまざまな補助金や助成金が準備されており、すべてを把握することは非常に困難であるといえます。
このページでは中小企業で活用しやすい補助金・助成金についてご紹介します。
(この記事は2021年6月15日に作成しております。)
補助金と助成金の違いについて
補助金と助成金は以下のように違いがあります。
補助金 | 助成金 | |
管轄 | 主に経済産業省・地方自治体 | 主に厚生労働省 |
財源 | 主に税金 | 主に企業が支払う保険料 |
受給予算 | 決まっている | 決まっていない |
期間 | 期間が設定されている | 随時募集 |
申請件数 | 決まっている場合もある | 決まっていない |
受給条件 | 公募制 | 要件を満たしていれば貰える |
返済 | 原則返済不要 | 原則返済不要 |
補助金は助成金よりも種類が豊富であり、助成金よりも高い金額を受給することが多いですが、公募制のため受給する件数や期間が正確に決まっている場合が多く、要件を満たしていても必ず受給することはできません。一方、助成金は要件を満たしていれば受給可能であり、その助成金がなくなることもありますが、基本的に随時募集をしています。
補助金とは?
補助金とは、国や自治体の政策目標(目指す姿)に合わせて条件を満たしている事業者の取り組みをサポートするため資金の一部をサポートするものです。申請期限が決められているものが多いと言えます。(ミラサポplusより)
補助金は「経済産業省」から支給されることが一般的で、主な内容については以下の通りです。
- 産業の振興および支援
- 事業者の技術開発の支援
- 創業の促進および支援
以上のような事業活動の推進など「事業者」を中心とした内容のものがほとんどとなります。
また、補助金に予算と期限が設けられているため、限度額に達すると条件を満たしても補助金がもらえないことや、期限を過ぎると条件を満たしても補助金がもらえないことがあります。
助成金とは?
助成金とは、「厚生労働省が中心となる雇用関係の支援金」「経済産業省から受給される研究開発系の支援金」の2つの種類があります。
中小企業が主に利用できる助成金は厚生労働省が中心となる雇用関係の支援金となり、この助成金は、事業主から集めた雇用保険によって支払われ、基本的に労働保険(労災保険+雇用保険)に入っていないと受給することが出来ません。
- 事業所における雇用人材の育成
- 事業所の職場環境や待遇の改善
以上のような中小企業をはじめとする「雇用」を中心とした内容のものがほとんどと言えます。
中小企業が活用したい補助金・助成金について
2021年現在で、中小企業が活用しておきたい補助金、助成金をいくつかご紹介します。
ものづくり・商業・サービス補助金(一般型)
ものづくり・商業・サービス補助金とは、新製品やサービスの開発や、生産プロセス改善などの一定の設備投資を対し、最大1,000~3,000万円補助してくれる制度です。
※1補助率は50%~75%となっているため、場合によっては高額な補助金を受け取ることが可能となります。
ものづくり・商業・サービス補助金については、「一般型」または「グローバル展開型」のいずれかを選択する必要があり、今回は一般事業者向けである「一般型」の概要について以下で解説します。(※「グローバル展開型」の最大補助額は3,000万円となります。)
対象者 | 下記の業種のうち、()内の数字以下となる事業者 ()内は資本金と従業員を表す。 ・卸売業(1億円/100人) ・小売業(5,000万円/100人) ・製造業・建設業・運輸業(3億円/300人) ・サービス業(5,000万円/50人) ・旅館宿泊業(5,000万円/200人) ・製造業のうちゴム製品製造業(3億円/900人) ・ソフトウェア・情報処理サービス業(3億円/300人) ・その他(3億円/300人) |
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補助対象経費 | ・革新的な製品やサービスを開発するための費用 ・生産プロセスやサービス提供の改善にかかる費用 ※ただし、単価あたりの金額が50万円(税抜)以上の設備投資に限ります。 |
補助金上限額 | 100万円~1,000万円 +特別枠補助額 |
補助率 | ・中小企業者 → 1/2 ・小規模企業者・小規模事業者 → 2/3 |
出典:令和元年度補正・令和二年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領|全国中小企業団体中央会
小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>
小規模事業者持続化補助金とは、販路拡大や新たなビジネスサービスの展開、生産プロセスの導入などに関する費用を補助してくれる制度です。この補助金制度は以前からありましたが、昨年度より事業者への新型コロナウイルスの影響を考慮し、「低感染リスク型ビジネス枠」が創設されています。
以下では「低感染リスク型ビジネス枠」をご紹介します。
対象者 | ・商業・サービス業(常時雇用の従業員5人以下) ・宿泊業、娯楽業(常時雇用の従業員20人以下) ・製造業その他(常時雇用の従業員20人以下) |
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補助対象経費 | 一定の要件※を満たす以下の経費 ・機械装置 ・広報費 ・展示会等出展費 ・開発費 ・資料購入費 ・雑役務費 ・借料 ・専門家謝金 ・設備処分費 ・外注費 ・感染防止対策費 |
補助金上限額 | 100万円 |
補助率 | 補助対象経費の3/4 |
出典:令和2年度第3次補正予算 小規模事業者持続化補助金 <低感染リスク型ビジネス枠>公募要領
※一定の要件は以下となります。
- 補助対象経費の全額が対人接触機会の減少に資する取組であること(感染防止対策費を除く)
- 使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費であること
- 原則、交付決定日以降に発生したもので、対象期間中に支払が完了した経費であること
- 証拠資料などによって支払った金額が確認できる経費であること
- 申請する補助対象経費については具体的かつ数量等が明確になっていること
IT導入補助金
IT導入補助金とは、起業時や事業承継時などにおいて、ITツールなどの導入を積極的におこなう事業者に対して一定額を補助してくれる制度です。
IT導入補助金は業務工程や業務種別の数に応じて、A類型~D類型に区分され、それぞれの区分ごとに補助率が決定します。
IT導入補助金の概要については次のとおりです。
対象者 | 下記の業種のうち、()内の数字以下となる中小企業および小規模事業者 ()内は資本金と従業員を表す。 ・製造業、 建設業、 運輸業(3億円/300人以下) ・卸売業(1億円/100人以下) ・サービス業(5,000万円/100人以下) ・小売業(5,000万円/50人以下) ・ゴム製品製造業(3億円/900人以下) ・ソフトウェア業又は情報処理サービス業(3億円/300人以下) ・旅館業(5,000万円/200人以下) ・その他の業種(3億円/300人以下)その他学校法人などについても別途条件があります。 |
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補助対象経費 | ・ソフトウェア費導入関連費 ・ハードウェアレンタル費等(C類型およびD類型のみ) |
補助金上限額 | ・A類型 → 30万円~150万円未満 ・B類型 → 150万円~450万円未満 ・C類型 → 30万円~450万円未満 ・D類型 → 30万円~150万円未満 |
補助率 | ・A類型 → 1/2以内 ・B類型 → 1/2以内 ・C類型 → 2/3以内 ・D類型 → 2/3以内 |
出展:中小企業・小規模事業者のみなさま IT導入補助金2021|一般社団法人サービスデザイン推進協議会
IT導入補助金は、プロセスと呼ばれる業務工程や業務種別によって区分が細かく分かれているため、申請の前にどの区分に該当するのかを必ず確認するようにしましょう。
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、事業活動における新分野への展開や業種転換などの取り組みに対して支援をおこなう制度のことです。
現在は第2回の公募が開始しており、第2回の公募締め切り後はさらに3回程度の公募が予定されています。また、事業再構築補助金には「通常枠」、「卒業枠」、「グローバルV字回復枠」および「緊急事態宣言特別枠」 の4つの事業類型があります。
対象者 | 下記の業種のうち、()内の数字以下となる中小企業および小規模事業者 ()内は資本金と従業員を表す。 ・製造業、建設業、運輸業(3億円/300人以下) ・卸売業(1億円/100人以下) ・サービス業(5,000万円/100人以下) ・小売業(5,000万円/50人以下) ・ゴム製品製造業(3億円/900人以下) ・ソフトウェア業又は情報処理サービス業(3億円/300人以下) ・旅館業(5,000万円/200人以下) ・その他の業種(3億円/300人以下) |
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補助対象経費 | ・建物費 ・機械装置 ・システム構築費(リース料を含む) ・技術導入費 ・専門家経費 ・運搬費 ・クラウドサービス利用費 ・外注費 ・知的財産権等関連経費 ・広告宣伝 ・販売促進費 ・研修費 ・海外旅費(グローバルV字回復枠および卒業枠のみ) |
補助金上限額 (中小企業の場合) | ・通常枠 → 100万円~6,000万円(中堅事業者は100万円~8,000万円) ・卒業枠※1 → 6,000万円~1億円 ・グローバルV字回復枠※2 → 8000万円超~1億円 ・緊急事態宣言特別枠※3 → 100万円~1,500万円 |
補助率 | ・通常枠 → 2/3(中堅事業者は1/2 ただし、4,000万円越は1/3) ・卒業枠 → 2/3 ・グローバルV字回復枠 → 1/2 ・緊急事態宣言特別枠 → 3/4~2/3 |
出展:令和二年度第三次補正事業再構築補助金公募要領|事業再構築補助金事務局
※1:卒業枠とは中小企業者から中堅・大企業を成長することを目指す事業者向けの特別枠のことをいいます。事業計画期間内に「組織再編・新規設備投資・グローバル展開」のいずれかにより、資本金または従業員を増加させる必要があります。
※2:グローバルV字回復枠とは、コロナの影響で大きく減少した売上を V 字回復させる 中堅事業者などのことをいいます。
※3:緊急事態宣言特別枠とは緊急事態宣言の影響を受ける事業者のうち、売上高の減少率や従業員の人数に応じて設けられた一定の要件を満たす事業者のことをいいます。
事業再構築補助金については、通常枠~緊急事態宣言特別枠までの事業類型に応じて細かな要件が設けられているため、事前に必ず応募要項を確認するようにしましょう。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、従業員の処遇改善や正社員化など、従業員に対する取り組みにかかる費用を助成してくれる制度です。
キャリアアップ助成金では事業者がおこなう取り組みをコースごとに区分し、コース区分に応じて補助率や上限額が変動します。キャリアアップ助成金の概要については次のとおりです。
対象業種 | 下記の業種のうち、()内の数字以下となる中小企業および小規模事業者 ()内は資本金と従業員を表す。 ・小売業(5,000万円/50人) |
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補助金上限額 | ・正社員化コース → 28.5万円~72万円(1人あたり) ・賃金規定等改定コース → 12万円~36万円(1事業所あたり) → 2.85万円~3.6万円(1人あたり) ・賃金規定等共通化コース → 42.75万円~72万円(1事業所あたり) ・諸手当制度共通化コース → 36万円~48万円(1事業所あたり) ・選択的適用拡大導入時処遇改善コース → 14.25万円~24万円(1事業所あたり) → 1.4万円~16.6万円(1人あたり) ・短時間労働者労働時間延長コース → 16.9万円~28.4万円(1事業所あたり) → 3.4万円~22.7万円(1人あたり) |
トライアル雇用奨励金
トライアル雇用奨励金とは、従業員を正規雇用するまでの試用期間の雇用(トライアル期間)を設けている事業者などに一定額の助成金を支給する制度のことです。
トライアル雇用については事業者と求職者とのミスマッチを防ぐことが目的であり、事業者と求職者の両者にとってメリットの多い雇用方式です。トライアル雇用助成金についてはいコースに応じて制度の内容が異なるため注意が必要です。ここでは、一般的な「一般トライアルコース」を中心に紹介します。
補助対象など | ①紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している ②紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている ③妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている ④55歳未満で、ハローワーク等において担当者制による個別支援を受けている⑤就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する上記の要件を満たしたうえで、次のいずれにも該当しない人 (1)安定した職業に就いている人 (2)自ら事業を営んでいる人または役員に就いている人で、1週間当たりの実働時間が30時間以上の人 (3)学校に在籍中で卒業していない人 (4)他の事業所でトライアル雇用期間中の人 など |
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補助金上限額 | 対象者1人あたり月額最大4万円(最長3か月で12万円) |
トライアル雇用助成金について、上記のほかにも細かな要件がいくつかあるため、ご注意ください。
また、上記の「一般トライアルコース」以外にも新型コロナウイルス感染症に対応したコースなどがあるため、それらのコースについては、事業主の方のための雇用関係助成金|厚生労働省をご確認ください。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金とは、高年齢者や障害を持つ人など、就職が困難な人を雇用する場合に助成金が支給される制度です。
特定求職者雇用開発助成金制度では求職者の状況により、いくつかのコースが設けられており、コースごとに助成金の金額などが変動します。特定求職者雇用開発助成金についての概要は以下のとおりです。
補助対象者 | 次の要件を満たす事業者 ・雇用保険適用事業所の事業主であること ・支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等を整備・保管していること ・支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等の提出を、管轄労働局等から求められた場合に応じること ・管轄労働局等の実地調査を受け入れること ・申請期間内に申請をおこなうこと ※その他コースごとに「対象となる事業主」の条件があります。 |
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補助金上限額 | ・特定就職困難者コース → 40万円~240万円 (30万円~100万円) ・生涯現役コース → 50万円~70万円 (40万円~60万円) ・被災者雇用開発コース → 40万円~60万円 (30万円~50万円) ・発達障碍者・難治性疾患患者雇用開発コース → 80万円~120万円 (30万円~50万円) ・就職氷河期世代安定雇用実現コース → 30万円 (25万円) ・生活保護受給者等雇用開発コース → 40万円~60万円 (30万円~50万円)()内は大企業など中小企業以外の事業者の上限金額を表す |
まとめ
補助金や助成金を申請する際に重要なものが「事業計画書」です。特に予算が設けられている補助金などは事業計画書の内容が審査結果に大きく影響を与えるといわれています。提出した事業計画書の内容が実現可能な数値であり、内容もしっかりとしたものを提出することで審査側に好印象を与えることができます。
さらに補助金や助成金は上手に活用することで、中小企業にとって効率の良い資金調達を実現できます。
しかし、その分申請の際の書類の準備や対面審査などがある場合もあり、それなりの労力と時間を有します。また、冒頭にもあるように補助金や助成金については毎年のように改正がおこなわれていることから、常に情報に気をつけなければなりません。
補助金や助成金の中には制度の内容が非常に複雑となっているものもあるため、そのような場合には税理士などの専門家に相談することで最適なアドバイスを受けることができます。
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