不動産賃貸業で認められている経費の種類とは?「事業規模Aさんの事例」

不動産所得の事業的規模の判定に「5棟10室(駐車場は50台)基準」があります。5棟というのは戸建て5軒分を指し、10室というのはアパートやマンションなどの部屋数、駐車場の場合は5台分で1室換算するというものです。

このように事業定規模の目安は明確ですが、実際に経費計上できるものとなると何が経費なのか明確な基準が分かりません

不動産所得の経費といえば一番に思いつくものに「固定資産税」がありますが、もちろん、それだけが経費ではありません。

そこで今回は、以下の事例を元に「不動産賃貸業の経費」について解説します。

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不動産賃貸業の経費事例と解説

不動産賃貸業の経費事例と解説

Aさんは昨年マンション1棟(中古・20室)を銀行より融資を受けて購入し事業的規模で不動産賃貸業を始めました。賃貸として入居者募集をするために、一部修繕を行い入居者募集しました。その甲斐あって現在では16室が埋まっている状態です。Aさんは、副業で不動産賃貸業を営んでいるため入居者の家賃を自分で回収に回れないことから、管理会社にその業務を委託しています。また、定期的に清掃依頼も業者に依頼しています。Aさんはこのマンションには住んでおらず、自分の家が別にあります。

(※何が経費になるかどうかの判定の前に、必須条件として「領収書」と領収書がもらえないような場合(例えば交通費)は、出金伝票を作成しておくことが大切です。ここでは、領収書や出金伝票の作成はできていることを前提に解説をすすめます。)

ここで経費になるものは次の通りです。

  1. 金融機関より融資を受け返済している支払利息
  2. 入居者募集のための広告宣伝費
  3. 入居者を募集するために行った修繕費
  4. 家賃回収を依頼した管理会社への管理費
  5. マンションの損害保険料(火災保険・地震保険)
  6. マンションの固定資産税・都市計画税・事業税などの租税公課
  7. 共用部分の電気代や水道代などの水道光熱費
  8. 業者へ依頼した清掃代や消耗品代
  9. 建物にかかる減価償却費
  10. Aさんが不動産所得の申告に税理士と契約している場合は税理士費用

このほか、何か郵送でやり取りをした場合には通信費、管理会社へ出向くようなことがあれば交通費が発生します。

今回Aさんは、このマンションには居住していないため家事費(Aさん自身が消費した費用)が発生していません。

もしAさんがこのマンションに居住していた場合には、その分は経費として認められないため差し引かなければなりません。その場合、明確に金額が分かっている場合にはその金額をマイナスし、分からない場合は、Aさん部分の割合を計算してその分をマイナスします。では、1から順番に解説していきます。

金融機関より融資を受け返済している支払利息

今回のAさんのように、既に建築されている収益物件を購入する場合もありますがマンションを建設する場合もあります。

この場合、賃貸業として事業開始後は支払利息として経費となり、開始以前は取得価額に含めて計算します。

 

入居者募集のための広告宣伝費

管理会社が募集広告を掲載した場合であっても、Aさんに請求がきます。

この場合、不特定多数の人に募集をかけているので広告宣伝費として経費処理します。

 

入居者を募集するために行った修繕費

居住者が退去した場合もあてはまりますが、原状回復や維持管理に必要なものは修繕費として経費処理します。

ただし、その修理を行うことで資産価値が上がる場合は、修繕費ではなく資産計上で経費計上します。耐久性や性能が向上する場合は修繕費ではなく資本的支出といわれ、建物や設備などの資産の増加になります。

 

家賃回収を依頼した管理会社への管理費

請求された全額を経費処理します。

この場合であれば、Aさんと管理会社の間で締結された契約書に基づき経費計上するのが一般的です。

 

マンションの損害保険料(火災保険・地震保険)

火災保険の場合は大10年、地震保険の場合は最大5年分の損害保険料を一括で支払う場合があります。

この場合でも経費として認められるのは当年分の「1年」だけです。残りは前払い費用として毎年保険料を経費として計上していくことで、徐々に減少させていきます。

もし家主自身がこのマンションに住んでいた場合、保険会社へ事前に依頼しておくと賃貸部分と自身の居住部分を分けて控除証明書を作成してもらえるので便利です。

 

マンションの固定資産税・都市計画税・事業税などの租税公課

マンションの固定資産税(土地・家屋とも)、都市計画税、事業税は経費になります。

ただし、家主がこのマンションに居住している場合は固定資産税と都市計画税は全額が租税公課として経費計上できるわけではありません。家主が居住して言う場合は、居住部分の割合を求め、その部分を控除しなければなりません。

ただし事業税は、不動産所得に対して課税されるものなので、納税金額の全額を租税公課として計上します。

 

共用部分の電気代や水道代などの水道光熱費

共用部分の電気代や水道代も経費として認められています。

例えば、エレベーター稼働のための電気代や、エントランスの空調設備の電気代、敷地内の庭園の水まきに必要な水道代など、入居者への請求ができない共用部分が対象であてはまります。

 

業者へ依頼した清掃代や消耗品代

管理会社を通して賃貸物件を管理すると、管理会社から清掃業者を紹介してもらえます。共用部分だけの掃除とはいえ、実際に家主が掃除まで行うのは難しいのが実情です。この場合の清掃代金も経費として計上できます。

概ね雑費という項目で計上するかもしくは管理会社の管理費と一緒に計上するのが一般的です。

また、管理台帳など文房具を購入しているケースもあります。この場合は消耗品費として経費計上できます。

 

建物にかかる減価償却費

建物は、減価償却といって使用期間に合わせて少しずつ減少していく価値を経費計上していきます。新築の鉄筋マンションの場合、47年かけて価値を少しずつ減少させていきます。多くの賃貸物件の場合、10年目以降に大規模修繕を行うことも珍しくありません。

この場合、本来47年しかもたない価値を延長させることになります。延長させた部分の金額は「資本的支出」として減価償却の対象となり、修繕費では計上しません

その他、設備に関するものも減価償却資産の対象になるものがあります。その場合は消耗品費として計上するのではなく工具器具備品として資産計上することがあります。

ただし、事業に使用していない資産は減価償却の対象となりません。つまり経費として認められないことになります。

 

不動産所得の申告に税理士と契約している場合は税理士費用

Aさんは不動産所得の申告が必要です。もちろん、本業があり副業として行っている場合も、また不動産賃貸業が本業の場合であっても同じです。

自分で申告書を作成できない場合には、税理士に依頼することもあります。この場合は、不動産賃貸業の経費として認められます。

最後に

最後に

このほか、事業的規模で不動産賃貸業を営んでいる場合には青色申告の届出を提出することを推奨します。

さらに、複式簿記で帳簿を電子で保存し、確定申告書を電子で提出することで65万円の控除を受けられます。経費として認められるものが少なければ少ないほど、この65万円控除は大きなメリットになります。

不動産賃貸業で経費と認められるものは固定資産税をはじめとする租税公課のほか修繕費や管理費など、賃貸物件の維持にかかるもののほか入居者を募集するための広告宣伝費など様々なものがあります。

経費を正しく理解することで、不動産所得も正しく計算でき適正な税額で納税でき、領収書や出金伝票の管理も含め、経費を管理することは大切です。

経費の管理や経費になるかどうかの判断に迷われている方は、是非、東京都千代田区神田にある税理士法人ハンズオンにお任せください。

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