飲食業で適用が可能な節税対策とは?特別控除・特別償却・税制

飲食業の経営で重要な指標で「FLRコスト」があります。「FLRコスト」とは、次の英語の頭文字をとってつなげたものです。

  • Food(材料費)
  • Labor(労働・人件費)
  • Rent(賃料・設備投資)

「FLRコスト」(材料費と人件費、賃料の合計)は、売上高に占める割合がどのくらいかを分析するために使われます。飲食業の経費の大部分は、FLRコストと言われていますので、経営改善を行う上でとても重要な数値となります。

飲食業の節税対策でも、このコストの大部分を占める「FLRコスト」について対策をとることが重要です。

以下では、飲食業で適用が可能な特別控除や特別償却、資本金の金額に関する注意点を含めた節税対策について解説していきます。

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飲食業の設備投資で利用できる特別控除・特別償却

飲食業の設備投資で利用できるの特別控除・特別償却

店舗を新しく出店した場合には、内装工事や店舗の機械装置、器具備品などの設備への投資が先行します。

売上が不透明な段階で、投資が先行しますので、無駄なキャッシュフロー(出ていくお金)をできるだけ抑えることが重要です。

自治体(税務署、都道府県や市区町村)が、企業の設備投資を促進している「特別控除」という制度があります。

「特別控除」とは、特別に、企業が納付する法人税の金額から、一定の金額を控除できる制度です。一定の金額を法人税から直接差し引くことができるので、税金を支払う金額が少なくなります。
会社のキャッシュフローで有利となりますので、適用できる場合は、ぜひ利用しましょう。(赤字など、儲けが少ない場合には、そもそも法人税が発生しないので、適用できない可能性があります。)

 

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、機械装置(160万円以上)やソフトウェア(70万円以上)などを購入または製作した場合に、取得価額の7%を特別控除できます。

ただし、以下の要件を満たす必要があります。

  • 中小企業者(資本金が3千万円以下の一定の会社)
  • 青色申告書を提出する会社

中小企業者で、税理士事務所に依頼されている方は視野に入れておきたい特別控除です。

例えば、機械装置200万円を取得した場合には、「200万円×7%=14万円(14万円の節税)」のような特別控除となります。

さらに詳しくは中小企業庁の「中小企業投資促進税制」を確認しておきましょう。

 

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、一定の経営力を向上させるような、機械装置や工具、器具備品、建物付属設備、ソフトウェア購入または製作をした場合に、取得価額の7%(資本金3千万円以下は10%)を特別控除できます。

※上記で説明した中小企業投資促進税制より幅広い投資が対象となっております。

以下の要件を満たす必要があります。

  • 中小企業者(資本金1億円以下の一定の会社)
  • 青色申告書を提出する会社
  • 中小企業等経営強化法の認定を受けた中小企業者など

適用するためには、一定の申請手続きが必要なため、取得する前の設備投資計画の段階で税理士等に一度相談してください。

また中小企業経営強化税制の詳細は「経営サポート「経営強化法による支援」」を確認しておきましょう。

 

商業・サービス・農林産業活性化税制

商業・サービス・農林産業活性化税制は、器具や備品、建物付属設備で一定のものを購入または製作(その法人の事業のために利用)した場合には、その設備の取得価額の7%を特別控除することができます。

次の要件を満たす必要があります。

  • 一定の税理士などの専門家による経営改善のアドバイスなどを受けること、またその書類を申告書に添付すること
  • 中小企業者(資本金が3千万円以下の一定の会社)
  • 青色申告書を提出する会社

顧問税理士に書類を作成してもらい、申告書に添付をする必要がありますので、早めに相談をしましょう。

さらに詳細は「No.5435 商業・サービス業・農林水産業活性化税制(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除)」を確認しましょう。

 

機械装置や器具備品などの特別償却

特別償却とは、一定の機械装置や器具備品などを購入または製作したときに、普通の減価償却に加えて、設備投資をした資産の取得価額に一定割合を乗じた金額(特別償却)を、加えて償却できる制度です。

特別償却なかには、「即時償却」とよばれるものがあり、購入した年度に購入金額の全額を減価償却として費用に計上することができる場合もあります。

長い目でみると、特別償却より特別控除が有利となる場合が多いです。

理由としては、特別控除は、取得した年度の法人税から直接控除することができるためです。

一方、特別償却は、特別償却部分を選択した年度の税金の負担軽減とすることができますが、耐用年数(設備を利用する期間)を通算してみると、合計で償却できる金額は同じになります。

特別償却は、課税を繰り延べているだけということを覚えておきましょう。

特別控除か特別償却のどちらを選択すべきか困ったときは、ぜひ税理士に相談をして、タックスプランニングをしましょう。

 

その他:新規出店・法人成り

飲食店を新規出店する場合、自治体(都道府県や市区町村)によって、特別な投資を促進する「投資促進制度」などがある場合があります。

新規出店計画の段階で、自治体の窓口に連絡をして、投資促進制度について確認をしましょう。

 

前年より給与を増加させた場合には税額控除が可能

前年より給与を増加させた場合には税額控除が可能

従業員の給与を前年よりも一定金額の増加をさせた場合には、その増加額のうち、15%または、上乗せ要件に該当した場合には25%を法人税から直接控除することができます。

この制度は、「所得拡大促進税制」と言われています。

「所得拡大促進税制」は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。

以下の要件を満たす必要があります。

  • 青色申告書を提出している会社
  • 中小企業者(資本金1億円以下)
  • 2年間勤務している従業員の給与が前年よりも1.5%以上増加している
  • 税額控除の上乗せによる25%の税額控除を適用するには、2年間勤務している従業員の給与が前年よりも2.5%以上増加しており、従業員の教育訓練費が前年より10%増加しているなどの一定要件を満たす必要がある

以上を満たす必要があります。

詳しくは中小企業庁の「積極的な賃上げに取り組む企業を応援します(中小企業向け所得拡大促進税制)」を確認してください。

 

飲食業の資本金に関する注意点

飲食業の資本金に関する注意

地方税の均等割と外形標準課税は資本金の額と大きく関係します。(この場合、資本金等の額をむやみに大きくしないように注意が必要です。

以下で注意点を説明していきます。

 

住民税の均等割について

飲食店として会社を設立したとき(法人成り含む)に、資本金等の額(「地方税法上の資本金等の額」と「会計の資本金+資本準備金」といずれか大きい金額)を小さくすると均等割の負担が少なくなります。

営業許可や店舗運営など法定な影響で資本金等の額を大きくする必要がない場合には、むやみに資本金や資本準備金を大きくしないほうが、税金上はメリットがあります。

「住民税均等割」とは、地方税の一つで、自治体の管轄する地域に店舗や事務所などがある会社に、一定金額が課税される税金です。

店舗、事務所などを有しているだけで、たとえ赤字であっても課税されます。

資本金等の額ごとに、シミュレーションしますと次の結果となります。

資本金額のシミュレーション

①資本金等の額を1億円超から、③1千万円以下に減少させた場合は、年間で110万円の均等割の節税となります。

資本金額のシミュレーション

参考:均等割額の計算に関する明細書

年間で110万円となりますので、長い期間で計算すると金額のインパクトは大きいものとなります。

 

外形標準課税について

飲食業の場合、外形標準課税適用法人になると、店舗賃料や人件費、借入利息に対して事業税が課税されることになるため、注意が必要です。

外形標準課税とは、事業年度の決算日の資本金(会計上の金額)が1億円をこえる会社の地代や人件費、利息や所得に対して、外形的に課税をする事業税のひとつです。

外形標準課税適用法人になるメリット・デメリットとしては、

  • メリット:儲け対して課税される税率(所得割)が低くなります
  • デメリット:資本金等の額に対して資本割という税金が課税されます
  • デメリット:家賃や人件費、支払利息と儲けの合計額に対して付加価値割という税金が課税されます

資本金を1億円以上に増資する場合などは、税金の観点からも外形標準課税を適用したほうが有利になるのか、不利になるのかをシミュレーションしましょう。

一般的には、儲けが大きい会社は、儲けに対して課税される税率(所得割)が低くなるので、外形標準課税を適用したほうが有利になります。

 

まとめ

今回は、飲食業の適用可能な節税について説明をいたしました。

節税対策としては、設備にかかるもの、人件費にかかるもの、その他地方税に関するものがあり、ポイントは次のとおりです。

  • 設備にかかるもの:新規出店など設備投資をした場合に、一定の税率の特別控除を受けることが可能
  • 人件費にかかるもの:従業員の給与を前年よりも、一定金額の増加をさせると特別控除を受けることが可能
  • 地方税に関するもの:資本金等の額をむやみに大きくすると税金が増加するリスクがありますので注意が必要

以上となります。

いずれも、飲食業を経営しながら経営者やオーナーが1人で行うことは難しいと言えます。

是非、この機会に税理士法人ハンズオンに一度ご相談ください。

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